遅くなりましたが、計算力学技術者の熱流体分野・燃焼流1級を受けましたので、感想等を書いておきます。
計算力学技術者とは?
日本機械学会が主催している計算力学に関する知識を問う認定試験です。
計算力学っていうのはシミュレーション*1のことですね。
世の中にはいろいろなシミュレーションがありますが、
主に機械設計などで使われるシミュレーションに焦点を当てた資格になります。
計算力学技術者の詳細はリンクを覗いてみてください。
https://www.jsme.or.jp/cee/www.jsme.or.jp
試験分野
計算力学技術者には3つの分野があります。
これらの分野ごとに2級・1級・上級アナリストの3つの級が設定されています。
- 固体力学
- 熱流体力学
- 振動力学
さらに、私が受けた熱流体1級は3つの専門分野に細分化され、1つを選んで回答します。
- 単相流(自動車の車体周りの流れ、配管を流れる水の流れなど)
- 混相流(COVID-19の飛沫解析や海の波、沸騰現象など)
- 燃焼流(エンジンの燃焼など)
詳細は機械学会の計算力学技術者のHP*2をご覧ください。
なんで燃焼流を受けたのかというところですが、燃焼流が好きだからですね。頭おかしいので。*3
あと、今の会社では関わっていませんが、学生の頃は専門が燃焼流の解析関係でした。
カーボンニュートラルが叫ばれる現在、産業としてはもうオワコンなんですけどね…。
合格基準
合格基準は試験案内から引用すると「正解が5割(75点)以上、かつ7割以上正解が3分野以上、かつ全問不正解が2分野以下」とのことです。
燃焼流の場合は燃焼の基礎理論で3分野、燃焼の解析で4分野、解析結果の検証で合計8つの分野*4になります。それぞれの分野で5~10問程度の問題が出てきます。
合格率は熱流体1級で50%ぐらいです。
試験勉強法
結論:問題集を買ってやり込む。
問題がマニアックなので、大学(院)で専門にしていても問題集なしで突破は難しいと思います。
ただ、問題集と同じような問題が多いですし、問題集丸暗記で当落線上ぐらいの点数が取れるかなあと。
ただ、理解して解こうとすると求められる知識レベルはそこそこに高いです。
Flue〇tやSta〇-CCM+で解析したことある程度では、結構勉強しないと厳しいですね。
ソルバーの理論解説書を読めるぐらいの知識は必要になるかなあと思います。
解析のコード書いたことある人ならばちょっと勉強すれば何とかなると思います*5。
私は1か月ぐらいかけて、合計30時間ぐらいかけて勉強していろいろ思い出しました。
一応、問題集以外で私が使った主な参考書を挙げておきます。
だいたいは問題集の参考書籍に入っていますね。
日本語の燃焼解析の本がほとんどないのがつらいところです。
新岡, 河野, 佐藤編著「燃焼現象の基礎」
これか水谷先生の燃焼工学のどちらかは読む必要があるかと思います。
基礎理論3分野を解くのに必須となります。日本機械学会「燃焼の数値計算」
日本語で書かれた希少な本ですが試験対策にはあまり使わず。
2~3章は学生の頃にお世話になりました。H.K. Versteeg, W. Malalasekera 「数値流体力学 第二版」
日本語訳してくださった方々に感謝。
燃焼は最後の方にちょこっとですが、FVMを理解するには良い本だと思います。Warnatz, Maas, Dibble「Combustion: Physical and Chemical Fundamentals, Modeling and Simulation, Experiments, Pollutant Formation」
物理や化学の方程式からどうやって燃焼現象の数値解析へモデリングしていくかに重点を置いて書かれた本です。
学生の頃は非常にお世話になった一冊ですね。Poinsot, Veynante「Theoretical And Numerical Combustion」
燃焼の数値解析について網羅的に書かれた本。
DNSからRANS、LESまで燃焼の数値解析手法が解説されています。
最新の第3版は一般の書店には流通していません。
直接著者のページから購入すると55ユーロで手に入ります。*6
試験費用
試験費用 ¥15,400
登録手数料 ¥3,300
問題集 ¥5,500
非常に高額です。正直ぼったくりに近いと思います。
所感
機械設計の素晴らしいところの1つに設計のための資格がいらないという点があると思っています。
建築・土木なんかは資格を持った人が設計・施工する必要がありますが、航空機や自動車などの設計に資格は必要ありません。
参入障壁が低く、誰でも機械を設計して製造、販売できるところが機械系の良いところです。
一方で、最近は機械設計にCAEが多用されるようになっています。 CAEは非常に強力な設計援助ツールですし、CAEの導入によって導入前ではできないような設計ができるようになりました。 しかし、CAEというのは間違った使い方すると、誤った答えを出してしまいます。 この可能性を少しでも小さくするためにも、技術者はCAE理論の基本を押さえるべきではないかと思います*7 。
この試験はCAEの基本を押さえるには良い試験だと思います。 まあ、コスパは大変悪いというのが難点ですので、 会社から受験費用を出してもらえる方は受けてみるといいのかなと思います。